自己剽窃は許容されない!定義や許されない理由と回避方法を解説!
「自己剽窃(じこひょうせつ)」とはどのような物か、ご存じでしょうか。この記事では自己剽窃の定義や許されない理由、自己剽窃を避けるために気をつけたいことを紹介しています。研究者として、自己剽窃は避けなければなりません。ぜひこちらの記事を読んでみてください。
「新しいジャーナルで発表した内容が自己剽窃だと言われた。自分が書いた物なのに問題になるの?」
「自己剽窃を回避するにはどのようにすればよいの?」
このように、自分の書いた文章が自己剽窃にあたるかどうか、疑問や不安がある人もいるでしょう。
本記事では自己剽窃の定義や、自己剽窃と呼ばれる物の種類や許されない理由について紹介します。自己剽窃とは何か、なぜしてはいけないのか理解し、自分の書いた物が自己剽窃にあたるかどうか確認できるようになるでしょう。
自己剽窃を回避するための方法も紹介しているため、問題を起こさないためにはどのように執筆していけばよいかも分かります。
自分の書いた物が自己剽窃にあたるかどうか疑問や不安のある人は、ぜひこちらの記事をチェックしてみてください。
目次[非表示]
- 1.自己剽窃の定義
- 2.自己剽窃は3種類に分類される
- 3.自己剽窃が許されない理由
- 3.1.出版社の著作権を侵害するから
- 3.2.論文には新規性があるという暗黙の前提があるから
- 3.3.論文の出版が遅れてしまうから
- 4.自己剽窃を回避する方法3選
- 4.1.ジャーナルのルールを確認する
- 4.2.論文を分割する場合は編集者に相談する
- 4.3.過去の自分の論文を新しい物のように発表しない
- 5.研究者として倫理的な行動をしよう
自己剽窃の定義
他人の文章を自分の文章のように盗用してはいけないことは、多くの人がご存じでしょう。しかし、過去に発表したことのある自分の文章を再利用しただけでも、再利用の仕方によっては「自己剽窃(じこひょうせつ)」と呼ばれ、非難を浴びてしまうことがあります。
自己剽窃の定義とは、自分が過去に書いた研究の論文や記事の文章を、適切に引用せずに、新たな書籍や記事などに再利用することです。(自己盗用と同義)
自己剽窃してしまうと、以前に発表した論文や記事を読んだことのない人には、新たな研究だと誤解させてしまうでしょう。
自己剽窃は3種類に分類される
ここからは、自己剽窃を3つの種類に分けて、それぞれ紹介します。
自己剽窃の中には、意図的にやってしまう物と、意図せずに自己剽窃になってしまう物があります。意図せず自己剽窃になるリスクは、何が自己剽窃にあたるかを知っていれば防げるでしょう。
ジャーナル(新聞や雑誌などの定期的な刊行物)に投稿したり、寄稿したりする場合は、以下の内容を確認しておいてください。
サラミスライス
サラミスライスとは大きな研究をしていたにもかかわらず、その研究を一度に発表するのではなく、細切れに発表して出版数を増やすことです。
大きな研究結果を1度で発表すると1つの論文になりますが、サラミスライスを行うことによって、論文の数を増やすことができるというメリットがあります。
しかし、元になった研究について細かく分けて発表することから、新規の研究をしたように錯覚させ、誤解を招く可能性があります。長期的な視点で見た時には、自分の評判を傷つけてしまう可能性があるでしょう。
重複投稿
ほぼ同時期に、同じ研究の論文を複数のジャーナル等に投稿したり、寄稿したりすることを重複投稿と言います。
研究者の中には、同時に複数のジャーナル等に投稿・寄稿して、出版の可能性を高めようとする人もいるでしょう。しかしそういった行動は重複投稿となり、自己剽窃と見なされます。
重複投稿によって編集者の時間を無駄にするだけでなく、ジャーナルのリソースを圧迫してしまう可能性があるため、避けましょう。
適切な引用の不使用
明確な自己剽窃の意図がなかったとしても、以前自身が執筆した文章を適切に引用せず、再度使用してしまった場合は自己剽窃となります。
元の内容と同じ物を執筆したとしても、適切に引用されていれば問題にならない場合もあるでしょう。しかし、元の論文等への引用がなかった場合、それを読んだ人に「新しい研究についての内容」と、誤解させる可能性があるため、注意してください。
自己剽窃が許されない理由
他人の文章を盗用しないよう気にかけていても、自分の書いた文章の再利用については、あまり気にしていない人もいるでしょう。しかし、盗作・盗用と同じように、自己剽窃も深刻な問題と言われています。
ここでは、自己剽窃が許されない理由を紹介します。なぜ自己剽窃に厳しい目が向けられているか、周囲にどのような影響を与えてしまうかを理解しましょう。
出版社の著作権を侵害するから
一度ジャーナル等に出版されると、出版物の権利は出版社が有するため、自己剽窃すれば著作権侵害が起きてしまいます。
研究結果等の知的所有権は研究者にありますが、一度出版した場合、出版物の権利を持っているのは出版社です。たとえ執筆者であったとしても、出版社が有する著作権を無視することはできません。
出版した後は、出版社の許可や適切な引用なく、出版物の再利用をしないようにしましょう。
出典:著作権法|e-Gov法令検索サイト
論文には新規性があるという暗黙の前提があるから
自己剽窃することは、すでに発表したことのある研究結果を新しい物と誤認させ、信頼を裏切ってしまう行為です。
基本的に、新しく発表される論文には新しい研究結果が提示されているという前提があります。自己剽窃する研究者がいると、この前提を崩してしまうでしょう。
その結果、研究者自身の地位が危うくなるだけでなく、ジャーナル等を読んでいる一般の人々からの信頼も失われる可能性があります。
論文の出版が遅れてしまうから
多くの出版社では自己剽窃を防ぐため、盗用探知ソフトウェアを使用してスクリーニング(検査)を行っています。もし自己剽窃が見つかってしまうと、出版プロセスに影響し、論文の出版が遅れてしまう可能性があるでしょう。
論文の出版の遅れは、研究者にとって致命的な結果をもたらすことがあります。同じ研究をしている他の研究者に、論文の出版で先を越された場合、基本的には先に発表した人の功績が認められるためです。
自己剽窃の発生により論文の出版が遅れることは、許されないと言えるでしょう。
自己剽窃を回避する方法3選
気づかないうちに、意図しない自己剽窃が起こってしまうことがあります。自己剽窃を防ぐには、編集者としっかりコミュニケーションをとったり、発表するジャーナルについて調べたりする必要があるでしょう。
自己剽窃を防ぐにはどのようにすればよいか、具体的なポイントを紹介するため、参考にしてみてください。
ジャーナルのルールを確認する
投稿するジャーナルのルールを確認し、ルールを守って投稿することが大切です。
ジャーナルが許可していなければ、複数のジャーナルに同じ内容の投稿をしないようにしたり、すでに公表した内容を再び投稿したりしないようにしましょう。
もし不明な点がある場合は、編集者に問い合わせて確認してください。
論文を分割する場合は編集者に相談する
出版数のために論文を分割するのではなく、分割をする正当な理由がある場合は、編集者に相談してから行いましょう。
1つの研究の論文を分割することは、サラミスライスと呼ばれる自己剽窃にあたります。しかし、大きな1つの研究の論文として発表するよりも、分割して発表した方が妥当な場合もあるでしょう。
編集者に無断で行うのではなく、事前にしっかり相談しておくことが大切です。
過去の自分の論文を新しい物のように発表しない
過去に発表したことのある論文を、新しい論文のように発表することは避けましょう。
また、別の言語で出版した物を、新たな言語で出版するといった行為も控えてください。
もし、過去の論文を再利用する場合は、著作権を持つ出版社の許可を得ることと、共同著作者の再利用の許可が必要です。さらに、ジャーナルのルールにも従い、適切に引用文献を記載しましょう。
研究者として倫理的な行動をしよう
ここまで自己剽窃について解説しました。自己剽窃とは、自分が過去に発表した出版物の内容を、許可や適切な引用なく再利用することです。他人の書いた内容を盗作・盗用することと同様に、自己剽窃は、研究者として許されない行為となっています。
自己剽窃してしまうと、自分自身の地位を貶めるだけでなく、一般の人からのジャーナル等に対する信頼を失わせるリスクがあります。自己剽窃したことで論文の発表が遅れ、自分や他の研究者に大変な迷惑をかける可能性もあるでしょう。
本記事で解説した内容を参考にし、論文を発表する際は、自己剽窃しないよう論理的で適切な行動をとることを心がけてください。